DiVA 創刊 0 号 巻頭言

Sep 10, 2000 中嶋 正之

20世紀は技術の時代。21世紀はアートの時代。

アーティストよ! エンジニアを目指せ。
エンジニアよ! アーティストを目指せ。

21世紀はコンテンツの時代であると言われている。携帯電話の普及も、 インターネットが普及するのも、ゲーム機器が売れるのも、 ハードよりもその上で動くコンテンツが重要となっている。 今後、この状況は加速され、コンピュータのみならず、家電製品、家具調度品、 車にしろ消耗品までもある物が売れるのは、 製品の質もさることながら、コンテンツ、コンセプトやソフトがより重要であり、 それらが時代にマッチしているか、個性的であるか、デザイン的にも美しいか、 など技術(ハード)以外のまさにアートとも言える要素に比重が高まっているといっても過言ではない。 しかし、日本におけるハードウェア関連のエンジニアの技術は今なお、 世界一とも言える技術を持っていることは間違いない。 残念ながらソフトやコンテンツの方面では欧米に数歩遅れをとっていることは事実であるが、 それらのコンセプトを実現しているのが日本の技術者である。 しかし、マルチメディアの時代を迎え、技術の流れは急速であり、 かつ若者から技術者場離れが始まっており、 エンジニア受難時代が到来しつつあることは事実である。 今だからこそ、より技術者が誇りを持って技術革新に邁進して欲しいと思う。

しかし、物が売れるのがコンテンツ如何であるとの時代となると、 エンジニアはこのままでいいかとの議論も起こる。 エンジニア自身が売れる製品のコンセプトを自ら考えよと言ってみても所詮、 使う脳の部位が違うので、グットアイデアが浮かびにくい。 この様な時代にはエンジニアも、美しい物を鑑賞したり、 自らホームページ作成からCG作品の作成など、感性を磨くためのアート的な訓練も必要となる。 無論、休暇には若者の街渋谷や新宿にでも繰り出し、 今何が受けているか自分の肌で感じるのもよいであろう。 いずれにコンテンツの時代には、エンジニアと言え、 アーチストを目指した学習や訓練が必須となると言える。 まさに21世紀はコンテンツの時代そして、やがてアートの時代へと移るものと断言できる。

一方、21世紀においては、20世紀で言われていた、 1年6ヶ月でチップの性能は2倍となるというムーアの法則は、あらゆる技術分野に適用され、 これから推定すると過去1000年に匹敵する革新が実現する。 使用するコンピュータのソフト、ハードともすぐに陳腐化してしまう可能性もある。 このような時代では、アーティストとも言え、堪えず技術動向、 ハード、ソフトの進展に精通していなければならない。 即ちアーチストもエンジニアを目指さなければならなくなる。

アートと技術の融合を目指し、アーティストとエンジニアが共に集う場、 情報交換の場として芸術科学会が発足したことは、 21世紀を迎えようとしている時期としてはタイムリーといわざるを得ない。

ところで、以下の数字は何か当てて欲しい。

1700年
数日
1850年―1890年
37日
1920年―1997年
100日以上
2010年以降
?日?

これは、人類における、1年間の休暇の日数の歴史であり、 1700年以前は人類は1年間に数日しか休まなかった。 しかし人類は着実に年間の休暇数を急激に増やしており、 現在では土曜、日曜が完全休日となり、 夏休みや有給休暇を入れると年間100日以上となっている。 2010年以降はどうなるかと言うと、 この調子で休暇日数が急増していくと、 21世紀の早い時期に毎日が休暇となる可能性が生まれる。 これはあながち冗談ではなく、かってギリシャ社会では、 経済に不可欠な活動は全て奴隷に任せぱなしにして、 支配階級であるギリシャ人は生産的な活動を何ひとつする必要がなく、 有り余る時間に苦悶し、芸術や学問に傾注させたという過去がある。 今後人類もロボットに生産活動はまかせ、 毎日をアートや知的活動に費やさねばならない時が再びやってくるとの予言である。

まさに21世紀は、再びアートの時代となるのである。

芸術科学会は、まさに21世紀を先取りした学会であると言える。