第10巻 巻頭言(Editor's Message)

巻頭言に先立ち,3月11日に発生した東日本大震災によって亡くなられた方々のご冥福をお祈りいたしますとともに,被災された方々に心よりお見舞い申し上げます.

世の中はこの震災を境に様変わりしました.さまざまなメディアを通じて報じられる凄惨な状況を目の当たりにし,当たり前であった日常や理論はなくなり,日本は震災前と震災後に時代を分けて語らねばならぬ様相を見せています.

この未曽有の危機において,自然の猛烈な力の前に人間の力は無力のように感じられます.しかし,本学会の両輪のひとつである「科学」の力は決して無力ではありません.ひとりの知識や力は微々たるものであっても,それを蓄積し英知を集結させる科学によって生み出される力は,たとえ月日がかかったとしても,困難を乗り越える力になります.  様々な技術を集結し,実際に活用しながら人々がこの災害に対して立ち向かっていく姿は,日本の持つ根源的な能力ではないかと思います.

一方,両輪のもうひとつである「芸術」,「エンタテインメント」はこのような状況下で無力と感じるかもしれません.それどころか,場合によっては「不謹慎」といわれ,一部の「コンテンツ」や「イベント」には発売中止や開催中止が起きています.しかし,これらも多くの積み重ねの上に熟成してきた過去があります.どんな時代にあっても進歩のために,火を絶やしてはいけないと思います.

現在の復興のプロセスの先に,「芸術」や「コンテンツ」が求められる時期が必ず来ると私は信じています.今は不謹慎といわれることがあっても,人は根源的に「芸術」や「コンテンツ」を求めると確信しています.そしてその時にはこれまで以上に強く,人々を照らすことでしょう.

いつかくるその日のために,芸術科学会論文誌は優れた表現技術とコンテンツのあくなき挑戦を支え続けていきたいと思います.

三上浩司
論文副委員長


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Last updated: 2011/12/15